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HARVONI®私の実臨床
第5回 肝線維化進展例におけるDAAの選択

肝線維化は、肝細胞傷害に対する生体防御反応の結果として生じ、
肝の星細胞が重要な役割を担っています。

―― 肝線維化のメカニズムについてお教えください。

河田 肝線維化はウイルス肝炎、アルコール性肝炎、非アルコール性脂肪性肝炎など種々の病因に対する生体防御の結果として生じる病態です1)。C型肝炎ウイルスなどによって肝細胞が傷害されるとマクロファージ、リンパ球、好中球などによる炎症が惹起されます。これによって類洞に存在する星細胞が活性化し、Ⅰ型コラーゲンを産生します。Ⅰ型コラーゲンは肝細胞が壊死・脱落した後の組織形状を維持し肝細胞の再生による組織修復を助け、星細胞が産生するコラゲナーゼ(matrix metalloproteinase:MMP)によって分解されます。これは正常な組織修復の過程ですが、肝細胞の傷害が慢性的に持続すると活性化星細胞自身が産生するMMP阻害物質(tissue inhibitorof metalloproteinase:TIMP)の働きがMMPを上回り、コラーゲンが集積して強固な線維組織となります。これが肝線維化です。

―― 肝線維化の改善は、どのように起きるのでしょうか。

河田 C型肝炎ウイルスなどの原因が排除されると活性化星細胞の一部は静止期となり、MMPによってコラーゲンが分解されて線維化は改善します。ただ肝臓表面の線維化は星細胞以外の細胞によって形成されるため、線維化の改善が遅れることがあり、FibroScanで測定した肝硬度は改善していても超音波でみた肝臓表面の形状は改善していないといったことがあります。

肝線維化進展例では、
肝での薬物代謝に関係するCYPやOATPの発現量の低下がみられます。

―― 肝線維化の進行と肝の薬物代謝機能は関連するのでしょうか。

河田 肝線維化ステージがF3の患者さんではF1の患者さんに比べて肝薬物代謝酵素CYPや輸送蛋白であるOATPの発現量が有意に低下していたという報告があります(図12)。なぜこうしたことがみられるのかはよくわかりませんが、一つの推測は、線維化の進行に従い肝の微小循環障害が起こり肝組織が酸素不足になることです。CYPによる代謝やOATPによる輸送を受ける薬剤を肝線維化進展例に投与する場合は血中濃度の上昇に注意が必要です。

図1 肝線維化と肝のCYP、OATP発現量

―― 肝線維化を進行させやすい患者背景や合併症は何でしょうか。

河田 飲酒、糖尿病がまず重要であり、他に男性、肥満、喫煙などが知られています。また50歳を超えると肝線維化の進行が加速することもわかっています。

―― 肝線維化の程度は、現在、どのように診断されているのでしょうか。

河田 肝生検が最も信頼できる方法ですが、現在では行わないことも多くなっています。このため、Ⅳ型コラーゲン、M2BPGiや最近、保険で認められたオートタキシン注)などの線維化マーカー、臨床検査値から算出されるFIB-4 indexなどの指標、肝硬度を含む画像検査などをもとに肝炎と肝硬変の鑑別を行います。ただ、それぞれの結果が一致しない場合も多く、総合的な判断ということになります。

注) オートタキシン:リゾホスファチジルコリンを分解し、線維化を引き起こすリゾホスファチジン酸を産生するリン脂質代謝酵素。線維化などの肝障害により血中に滞留するため、肝線維化の初期段階から病態を把握できる。

DAA治療においては、
確実な服薬と肝に対する安全性に配慮する必要があります。

―― 肝線維化が進行している患者さんにおけるDAA治療で注意すべき点は何でしょうか。

河田 肝線維化の進行に伴って、肝血流量が低下し、肝への薬物の送達が低下する可能性があります。ですから、まず、DAAを確実に服用してもらうことが非常に重要です。また安全性、とくに肝機能障害については細心の注意が必要であり、ALT、ASTが3桁を超えるような上昇があった場合は、DAAの中止も検討します。また、NS3/4Aプロテアーゼ阻害薬のように肝で代謝される薬剤の場合は、肝機能低下による血中濃度上昇には注意する必要があります。

ハーボニーの実臨床研究では、
C型代償性肝硬変例においても98.4%のSVR12率が得られました。

―― 大阪市立大学におけるハーボニーの実臨床研究の成績についてお教えください。

河田 この研究は大阪市立大学でハーボニーによる治療を受けたジェノタイプ1bのC型慢性肝炎、C型代償性肝硬変患者313例を対象としたコホート研究です。313例中、3例が有害事象(消化管出血、発熱、小脳出血)で治療を中止し、治療完遂率は99. 0%でした(図23)。また2例が治療終了後のフォローアップができなかったため、これら5例を除く308例で解析を行いました。SVR12率は全体で98.7%(304/308例)でした。またC型慢性肝炎において98.8%(241/244例)、C型代償性肝硬変において98. 4%(63/64例)と、代償性肝硬変において慢性肝炎と同程度のSVR12率が得られました。

図2 SVR12率(大阪市立大学)

1日1回1錠を食事と関係なく服薬でき、
線維化の進展したC型慢性肝炎、C型代償性肝硬変に適したDAAです。

―― 肝線維化進展例において、ハーボニーの特性をどのように治療に活かすことができますか。

河田 先ほど触れたように、肝線維化進展例においては、確実に服薬してもらうことが重要であり、服薬アドヒアランスの低下は有効性の低下に直結する可能性があります。1日1回1錠を食事と関係なく服用できるハーボニーは、確実に服用していただくという点で、最適な薬剤であると考えられます。

また、肝に対する安全性という点では、当院の検討でも、他の実臨床研究においても肝機能障害による治療中止例は認められていません4-8)

―― DAAの投与期間について、どのようにお考えでしょうか。

河田 私はハーボニーの12週間投与というのは望ましい投与期間であると考えます。初回治療例が増えている最近の状況を考えると、DAA治療中の受診時に主治医と患者さんがしっかりとコミュニケーションをとり、人間関係を作っていくことが、治療後の定期的なフォローアップに来ていただくためにも非常に重要だからです。

―― 今後のDAA治療におけるハーボニーへの期待をお教えください。

河田 ジェノタイプ1と2の両方に有効であり、肝線維化進展例を含めて多くの実臨床研究で有効性と安全性が検討されていること、そして服薬アドヒアランスや投与期間の点でも、ハーボニーがこれからもC型慢性肝炎・代償性肝硬変の治療に大いに貢献していくことは間違いないでしょう。

  1. 小田桐直志、河田則文ほか. 臨床検査 2018; 62: 586-592
  2. Nakai K, et al. Drug Metab Dispos 2008; 36: 1786-1793
  3. Kozuka R, et al. J Viral Hepat 2018; 25: 535-542
  4. Tsuji K, et al. J Gastroenterol 2018; 53: 1142-1150
  5. Ogawa E, et al. J Gastroenterol 2017; 52: 845-854 
  6. Iio E, et al. Hepatol Res 2017; 47: 1308-1316
  7. Kanda T, et al. Int J Mol Sci 2017; 18: E906
  8. Ozono Y, et al. World J Hepatol 2017; 9: 1340-1345

【国内第3相試験における安全性】

C型慢性肝炎患者又はC型代償性肝硬変患者を対象に本剤の単独投与における有効性及び安全性を評価した国内第3相臨床試験2試験において、288例中55例(19.1%)に副作用が認められた。主な副作用は、頭痛9例(3.1%)、悪心、便秘及びそう痒症各7例(2.4%)並びに口内炎5例(1.7%)等であった。(効能追加承認時)

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