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HIV感染症患者における喫煙、COPD

高齢化時代を迎えるHIV感染症治療において、患者さんの加齢に伴う併存疾患への配慮は重要です。当ページでは、HIV感染症患者さんにおける喫煙や慢性閉塞性肺疾患(COPD)に関する疫学データなどをご紹介いたします。

HIV感染症患者における喫煙、COPD

監修:国立国際医療研究センター
エイズ治療・研究開発センター
水島 大輔 先生

HIV感染症の予後が著しく改善したことに伴い、多くの患者さんが加齢に伴う問題に向き合うようになっています。

医療者にとって患者さんの併存疾患や生活習慣に留意することが求められますが、なかでもHIV感染症患者さんの集団では喫煙者が多いというデータ1-3もあり、喫煙に対して注意喚起を行うことは重要です。

抗HIV療法の進歩によって得られた高齢化が進行する時代にあって、喫煙するHIV感染症患者さんは、HIV感染よりも、むしろ喫煙によって、生きられるはずの時間を失っていることが示唆されています3

今回は、HIV感染症患者さんの心血管疾患(CVD)発症のリスク因子から、生存率やCOPD発症に関するデータ、さらに新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の重症化因子としての喫煙、米国保健福祉省(DHHS)ガイドラインの推奨について、ご紹介いたします。

ウイルス抑制にとどまらない、患者さんの生涯にわたる健康維持を目指したHIV診療の参考にしていただければ幸いです。

1. 日本エイズ学会 HIV感染症治療委員会『HIV感染症「治療の手引き」』第23版 2019年11月発行.
2. 石井祥子, 他: 日本エイズ学会誌 2011; 13: 357.
3. Helleberg M, et al.: Clin Infect Dis 2013; 56: 727.

HIV感染症患者の心血管疾患(CVD)発症に関連する因子(海外データ)

現在喫煙中の患者さんでは、喫煙歴なしの患者さんと比較して、心血管疾患のリスクが2.25倍高くなることが示されました。

      

Cox回帰モデル

目的 PLWHにおける心血管疾患の発症の予測因子を検討する。
対象 D:A:D studyに参加したPLWH32,663例。
方法 心血管疾患の発症例と非発症例別にベースラインの患者背景を調査して、心血管疾患の発症の予測因子をCox回帰モデルを用いて解析することにより、心血管疾患の発症予測モデルを作成した。

Friis-Møller N, et al.: Eur J Prev Cardiol 2016; 23: 214.

生存率(HIV感染の有無、喫煙状況別)(デンマークのコホート研究)(海外データ)

喫煙のHIV感染症患者さんでは、喫煙の一般集団と比較しても死亡率が高くなることが示されました。

目的 HIV感染症患者の喫煙と死亡率の関連を評価する。
対象 デンマークのHIV感染症患者2,921名および対照の一般集団10,642名。
方法 1995~2010年のHIV感染症患者/一般集団、喫煙者/非喫煙者の全死亡、心血管疾患、がんによる死亡をもとに喫煙の影響を評価した。

Helleberg M, et al.: Clin Infect Dis 2013; 56: 727.

HIV感染/非感染別のCOPD患者の診断年齢(海外データ)

HIV感染症患者さんで49.7歳、非感染集団で62.2歳であり、HIV感染症患者さんでは約12歳も若いことが明らかになりました。

目的 HIV感染の有無でCOPDの発症率に違いがあるかを調査する。
対象 カナダ・オンタリオ州で1996年~2015年にCOPDと新たに診断されたHIV感染症患者1,849名およびHIV非感染者168,727名。
方法 医療に関する行政記録を用いHIV感染の有無によるCOPDの発症率を比較した。
主な結果 HIV感染症患者のCOPD発症率は非感染集団より高かった[10.4 vs. 9.0 例/1,000人・年、標準化罹患比:1.16(95% CI 1.10 to 1.21)]

Antoniou T, et al.: CMAJ Open. 2020; 8(1): E83.

【参考情報】COVID-19重症化と喫煙歴(海外データ)

COVID-19に関する現時点での研究のシステマティックレビューでは、喫煙者は非喫煙者に比べて、重症化のリスクは1.4倍、集中治療室(ICU)での治療あるいは機械的換気導入あるいは死亡のリスクが2.4倍になることが示されています。

目的 喫煙とCOVID-19の予後の関連について調査する。
対象と方法 2020年3月17日にCOVID-19患者の喫煙状況のデータのある2019年~2020年の文献をPubMedおよびScienceDirectにて検索し5論文を特定しシステマティックレビューを行った。

Vardavas C. and Nikitara K.: Tobacco Induced Diseases 2020; 18: 20.

慢性炎症や併存疾患に対するDHHSガイドラインの推奨

• 慢性的な非AIDS関連の疾患や死亡を減らすためのケアでは、ARTによるウイルス抑制の維持、リスク因子を減少させる戦略(禁煙、健康的な食事、運動など)、そして高血圧、高脂血症、糖尿病などの慢性的な合併症の管理に焦点を当てるべきである(AⅡ) 。

US Department of Health and Human Sciences (DHHS). Guidelines for the use of antiretroviral agents in adults and adolescents living with HIV. May 2018. Available from: https://aidsinfo.nih.gov/guidelines . H-19. Accessed December 2018. 木村哲 監訳:HIVを保有する成人および青少年における抗レトロウイルス薬の使用に関するガイドライン 2018年10月25日版.p.112.株式会社テクノミック,2019.