デルタ変異株に対する2種のワクチンの有効性は?
世界各国で感染が急拡大している重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)のB.1.617.2系変異株(デルタ株)に対する2種類のワクチンの有効性が、英国から報告された。いずれのワクチンも1回接種のみでは有効性が低く、2回接種の重要性が明らかになった。英国公衆衛生庁(PHE)のJamie Lopez Bernal氏らによる研究で、詳細は「The New England Journal of Medicine」に7月21日掲載された。
この研究は、英国で最初に同定されたB.1.1.7系変異株(アルファ株)とともに、インドで最初に同定されたデルタ株が英国内で増加し始めた時期に実施された。2021年5月16日までにワクチン接種を受けながらも新型コロナウイルス感染症(COVID-19)を発症した16歳以上の患者について、ウイルスのタイプ(アルファ株かデルタ株のいずれか)と接種したワクチンのタイプ(ファイザー社製BNT162b2かアストラゼネカ社製ChAdOx1 nCoV-19のいずれか)、および接種回数との関連を解析。ワクチン未接種の対照群とPCR検査陽性者率を比較し、有効性を検討した。
まず、ワクチン未接種者の陽性率を見ると、アルファ株は0.076%、デルタ株は0.042%だった。
これに対し、BNT162b2の1回接種後ではアルファ株の陽性率0.052%で、交絡因子で調整後の有効性は47.5%(95%信頼区間41.6~52.8)、デルタ株は陽性率0.016%、有効性35.6%(同22.7~46.4)と計算され、いずれも有効性が低かった。ただし、2回接種後には、アルファ株の陽性率が0.003%で有効性93.7%(同91.6~95.3)、デルタ株の陽性率は0.008%、有効性88.0%(同85.3~90.1)となった。
同様に、ChAdOx1 nCoV-19の場合も1回接種後は、アルファ株の陽性率が0.041%で有効性48.7%(同45.2~51.9)、デルタ株は陽性率0.032%、有効性30.0%(同24.3~35.3)と有効性が低いものの、2回接種後は、アルファ株の陽性率が0.011%で有効性74.5%(同68.4~79.4)、デルタ株は陽性率0.026%、有効性67.0%(同61.3~71.8)だった。
なお、ワクチンのタイプを区別せずに接種者全体で有効性を検討すると、1回接種でアルファ株に対し48.7%(同45.5~51.7)、デルタ株に対して30.7%(同25.2~35.7)であり、2回接種では同順に87.5%(同85.1~89.5)、79.6%(同76.7~82.1)だった。
著者らは、「2種類のワクチンはいずれもアルファ株、デルタ株の双方に対して1回接種では有効性が低いが、2回接種により有効性が向上する。デルタ株に対する有効性も2回接種後には、アルファ株よりわずかに低い程度である」とまとめている。この結果を基に、「これら2種類のワクチンでは、2回接種完了者を最大化する努力が求められる」と述べている。(HealthDay News 2021年7月22日)
Abstract/Full Text
https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa2108891
Editorial
https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMe2110605
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