COVID-19入院患者のほぼ半数が1年後に有症状
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)で入院治療を要した場合、1年経過後も約半数が何らかの症状を有しているという実態が明らかになった。世界で最初にCOVID-19パンデミックが生じた中国・武漢発の報告。日中友好病院(中国)のBin Cao氏らの研究によるもので8月28日、「The Lancet」に論文が掲載された。
この研究は、武漢でも最も早くからCOVID-19患者を受け入れた病院の一つである金銀潭病院の入院患者を対象に行われた。2020年1月7日~5月29日に同院へ入院後に生存退院した人から、退院後に死亡した人や骨関節疾患、認知症、精神疾患を有する元患者を除外し1,276人を追跡対象とした。年齢中央値は59.0歳(四分位範囲49.0~67.0)で、681人(53%)が男性だった。入院中に958人(75%)に対して酸素投与が行われていたが、ICU入室や人工呼吸管理などを要した重症者は少数(94人)だった。
退院後の追跡調査は6カ月後と12カ月後の2回実施され、追跡期間中央値はそれぞれ185.0日(同175.0~198.0)、349.0日(337.0~361.0)だった。追跡調査では、健康関連の生活の質(HRQOL)の評価、一般的臨床検査、6分間歩行テストなどを施行。また、就労状況を確認した。
何らかの症状を1つ以上有している人の割合は、6カ月後の68%(1,227人中831人)から12カ月後には49%(1,272人中620人)へと有意に減少していたが(P<0.0001)、なお約半数が症状を有していた。また、呼吸困難を訴える人(mMRCスコア1以上)の割合は、6カ月時点では26%(1,185人中313人)であったが、12カ月後には30%(1,271人中380人)へ上昇していた(P=0.014)。
メンタルヘルスも、6カ月後より12カ月後の方が悪化する傾向にあった。例えば、不安やうつ症状のある元患者は、6カ月時点では23%(1,187人中274人)であるのに対して12カ月後は26%(1,271人中331人)だった(P=0.015)。
ロジスティック回帰分析にて12カ月後の有症状に関連するリスク因子を検討した結果、女性は男性よりも倦怠感や筋力低下を訴える確率が高く〔オッズ比(OR)1.43(95%信頼区間1.04~1.96)〕、不安やうつ症状も同様であり〔OR2.00(同1.48~2.69)〕、拡散障害も女性に多く認められることが明らかになった〔OR2.97(同1.50~5.88)〕。そのほか、入院中のステロイド投与も、倦怠感や筋力低下のオッズ比上昇と関連していた〔OR1.51(同1.05~2.16)〕。
なお、6分間歩行テストの結果は6カ月時点と12カ月後で有意差はなかった。12カ月時点では、COVID-19罹患前に就労していた人の88%(479人中422人)が職場復帰していた。
そのほかに、元患者群と年齢、性別、併存疾患が一致するCOVID-19に罹患していない対照群を設け、HRQOL等を比較した結果、COVID-19罹患者は12カ月経過後も、痛みや不快感、不安、うつ症状など、多くの健康障害を抱えていることが分かった。
本論文に対しジャーナルが掲載した付随論評には、「Long COVIDへの対応は現代医学に課せられた重要な課題だ。COVID-19治療終了後の持続的な倦怠感、息切れ、うつ症状などは、世界中で数百万もの人々に悪影響を及ぼす可能性がある。医療従事者はLong COVIDへの理解を速やかに深めていかなければならない」と記されている。(HealthDay News 2021年8月27日)
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(参考情報)
Abstract/Full Text
https://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140-6736(21)01755-4/fulltext
Editorial
https://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140-6736(21)01900-0/fulltext
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