SARS-CoV-2感染歴は良好な免疫反応を保証しない
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に罹患したことがあるから、ワクチンは打たなくても大丈夫――そう思っている人は、考えを改めた方が良さそうだ。COVID-19罹患により高レベルの抗体産生が約束されるわけではなく、また、1回のワクチン接種で盤石な免疫反応が保証されるわけでもないことが、新たな研究で明らかになった。米ノースウェスタン大学のThomas McDade氏らの研究によるもので、詳細は「Scientific Reports」に8月30日掲載された。
McDade氏らは、27人の試験参加者から集めた血液検体を利用し、ファイザー社製およびモデルナ社製のCOVID-19ワクチン2回接種による感染防御能の持続期間や、変異株に対する有効性、COVID-19既往の有無による抗体産生の違いを調べた。試験参加者の平均年齢は39.7歳、女性が51.9%で、接種ワクチンの種類は、ファイザー社製59.3%、モデルナ社製40.7%だった。また、ワクチン接種前に抗RBD抗体が検出された陽性者は13人、検出されなかった陰性者は14人で、陽性者のうち4人はPCR検査で重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)感染が確認されていたが、残りは無症状で経過していた。血液サンプルは、1回目のワクチン接種後に1回(接種から中央値18.5日後)と、2回目の接種後に2回(2回目接種から19.8日後と1回目接種から95.5日後)に集められた。
解析の結果、2回目のワクチン接種後は1回目の接種後に比べて、抗RBD抗体レベルが約5倍になることが明らかになった(中央値で21.0対4.2μg/mL)。また、2回目接種後のSARS-CoV-2野生株に対する予防効果は97.7%と極めて高いものの、変異株に関しては、ガンマ株27.1~70.0%、ベータ株34.2~66.7%、アルファ株45.9~92.0%であり、有意に低かった。抗RBD抗体レベルは、ワクチン接種後のピーク時に比べ接種3カ月後には50.1%低下していた。また、変異株に対する予防効果も3カ月後には低下し、特にガンマ株(31.2%)とベータ株(27.5%)で低下の幅が大きかった。
COVID-19既往の有無で比較した結果については、1回目のワクチン接種から3カ月後の抗RBD抗体レベルが、PCR検査でCOVID-19感染が確認された人(27.2μg/mL)は、その他の抗体陽性者(8.2μg/mL)や陰性者(8.7μg/mL)よりも高いことが明らかになった。しかしSARS-CoV-2のスパイクタンパク質とヒト細胞のアンジオテンシン変換酵素2(ACE2)との相互作用をブロックする中和抗体のレベルについては、陽性者と陰性者との間に有意差がなかった。
McDade氏は、「われわれの研究結果は、COVID-19の罹患歴が、高レベルの抗体産生や、初回ワクチン接種後の強力な免疫反応を保証するものではないことを示している。また、感染歴があっても症状が軽症か無症状だった人の抗体反応は、感染歴のない人と本質的に変わらない」と強調する。
なお、この研究はデルタ株が現れる前に実施されたが、McDade氏は、デルタ株に対してもこの研究結果が当てはまるとの見解を示している。「ワクチンは優れた予防効果をもたらすが、変異株に対しては、ワクチン設計時のターゲットであった野生株に対するレベルと同等の効果を期待し得ない。また、接種後の免疫力は時間の経過に伴い低下していく。つまり現状は、デルタ株の流行と、早期にワクチン接種を受けた人の免疫力低下という2つの懸念に直面しているということだ」と述べている。(HealthDay News 2021年8月31日)
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(参考情報)
Abstract/Full Text
https://www.nature.com/articles/s41598-021-96879-3
Press Release
https://news.northwestern.edu/stories/2021/08/covid-19-antibody-study-shows-downside-of-not-receiving-second-shot/&fj=1
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