SARS-CoV-2変異株の毒性の検討――ICU入室や死亡リスクがより顕著に
重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)変異株の毒性を仔細に検討した研究結果が報告された。トロント大学ダッララナ公衆衛生大学院(カナダ)のDavid N. Fisman氏とAshleigh R. Tuite氏が行った後ろ向きコホート研究の結果であり、カナダ医師会雑誌「CMAJ」に10月4日、論文が掲載された。
SARS-CoV-2の変異株は野生株に比較し毒性が強いことに関しては、既に複数の報告が見られる。ただしそれらの多くは、変異株の拡散に伴い感染率や重症化率の上昇が認められるといった疫学研究に基づく報告であり、個々の変異株の毒性についての知見は限られている。これを背景として本論文の著者らは、同国オンタリオ州でSARS-CoV-2検査を受け陽性であることが確認された人を対象とする後ろ向きコホート研究を行い、変異株の毒性を野生株と比較検討した。
解析対象は、2021年2月7日~6月27日に検査を受けた人から、長期介護施設入居者を除外した21万2,326人。なお、同国では2021年2~6月の間に、それまでの野生株にかわってN501Y変異を有するウイルス(アルファ株、ベータ株、ガンマ株)が主流になり、続いてデルタ株が増加していた。解析対象者のうち、4万3,417人(20.4%)が野生株、16万2,920人(76.7%)がN501Y変異株の感染であり、デルタ株の感染は5,989人(2.8%)だった。
年齢、性別、ワクチン接種歴、併存疾患、妊娠の有無、検査を受けた時期を調整後、入院、集中治療室(ICU)への入室、および死亡のリスクを比較検討した。
その結果、入院については野生株に比し、N501Y変異株ではオッズ比(OR)1.52(95%信頼区間1.42~1.63)、デルタ株ではOR2.08(同1.78~2.40)であり、ICU入室についてはN501Y変異株OR1.89(同1.67~2.17)、デルタ株OR3.35(同2.60~4.31)、死亡についてはN501Y変異株OR1.51(同1.30~1.78)、デルタ株OR2.33(同1.54~3.31)であった。この結果は、N501Y変異株の毒性が野生株よりも強く、デルタ株はより強いことを表しており、致命的なパンデミックの生じるリスクが上昇したことを意味している。
「CMAJ」暫定編集長のKirsten Patrick氏は本論文の付随論評の中で、「カナダは今、2020年初頭に直面した当初のSARS-CoV-2とは異なるウイルスのパンデミックと戦っている。ウイルスはより賢く、より危険なものへと変化している。よってわれわれも、より賢くなる必要がある。カナダ政府は人々の安全を保つために、有効性が示されている全ての対策を効果的に融合した政策を推進すべきだ」と述べている。
なお、1名の著者が、製薬企業との利益相反(COI)に関する情報を明らかにしている。(HealthDay News 2021年10月5日)
Abstract/Full Text
https://www.cmaj.ca/content/early/2021/10/04/cmaj.211248
Editorial
https://www.cmaj.ca/content/early/2021/10/04/cmaj.211656
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