D-ダイマーではCOVID-19に伴う肺塞栓症を除外できない可能性
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に伴う肺塞栓症の可能性を除外する際、D-ダイマーの有用性は限定的であることを示唆する研究データが、「JAMA Network Open」に10月8日、レターとして掲載された。米南フロリダ大学のConstantine N. Logothetis氏らが報告した。
COVID-19罹患に伴い肺塞栓症のリスクが上昇することが明らかになっている。肺塞栓症のスクリーニング手段の一つとして以前からD-ダイマーが用いられてきているが、COVID-19に伴う肺塞栓症におけるD-ダイマーの診断能は十分に検討されていない。そこでLogothetis氏らは、COVID-19入院患者を対象とする単施設での横断研究を行い、D-ダイマーの有用性を検討した。
2020年1月1日~2021年2月5日のCOVID-19入院患者、連続1,541症例のうち、肺塞栓症が疑われD-ダイマーの測定とコンピューター断層撮影肺血管造影(CTPA)が同日に施行されていた287人(平均年齢58.2±16.1歳、男性51.4%)を解析対象とした。このうち118人(41.1%)が集中治療室(ICU)入室を要し、27人(9.4%)が入院中に死亡していた。CTPAでは287人中37人(12.9%)に肺塞栓症の所見が認められ、250人(87.1%)は否定された。
D-ダイマーレベルは、CTPAで肺塞栓症の所見のある全ての患者、および、所見が見られなかった250人中の225人(91.2%)、計265人(解析対象全体の92.3%)が、一般的な基準値である0.05μg/mL以上だった。CTPAでの肺塞栓症の所見なし群のD-ダイマーは0.2~128μg/mLの範囲にあり、中央値は1.0μg/mL(四分位範囲0.6~1.8)だった。一方、所見あり群は0.5~1万μg/mL以上の範囲にあり、中央値は6.1μg/mL(同2.0~19.4)だった。また所見なし群の平均値は1.2±2.8μg/mLであるのに対して、所見あり群では8.7±11.6μg/mLであり、後者が有意に高かった(P<0.001)。
D-ダイマーによる肺塞栓症の診断能は、一般的な基準値である0.05μg/mLでは感度が100%であるものの、特異度は8.8%だった。また、診断能を高めるために提案されている年齢調整された基準値(年齢×0.01)では感度94.6%、特異度22.8%であり、両者のAUCは同等で(P=0.67)診断能の向上は見られなかった。
まとめると、CTPAで肺塞栓症の所見が認められたCOVID-19入院患者の全てがD-ダイマーの一般的な基準値である0.05μg/mL以上を示し、かつ、肺塞栓症の所見が認められない患者を含めても、92.3%が0.05μg/mL以上だった。このことから、COVID-19に伴う肺塞栓症の可能性をD-ダイマーにより除外することは困難と著者らは述べている。また、特異度を高めるためにカットオフ値を高く設定した場合は、許容できない安全上の問題が生じるとしている。
結論として著者らは、「これらの結果は、COVID-19入院患者の肺塞栓症の可能性を除外する手段としてD-ダイマーを用いることは不適切と考えられ、D-ダイマーの臨床的有用性は限られたものであることが示唆される」と述べている。(HealthDay News 2021年10月8日)
Abstract/Full Text
https://jamanetwork.com/journals/jamanetworkopen/fullarticle/2784795
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