ステロイドを増量してもCOVID-19転帰へのプラス効果なし
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による低酸素血症を呈している重症患者に対するステロイドの効果を、標準量と高用量の2種類の用量で比較検討した研究結果が、「Journal of the American Medical Association(JAMA)」に10月21日掲載された。結果は有意な差がなく、高用量ステロイドの有用性は支持されなかった。
この研究は、コペンハーゲン大学(デンマーク)のMarie W. Munch氏らのCOVID STEROID 2トライアルグループが国際多施設共同研究として実施し、欧州とインドの26病院が参加した。研究対象は、2020年8月~2021年5月にCOVID-19のため入院し、10L/分以上の酸素投与または人工呼吸管理を要した成人患者982人〔年齢中央値65歳(四分位範囲55~73)、女性31%〕。
デキサメタゾン投与量が6mg/日の群497人、12mg/日の群503人の2群に割り付け、いずれも経静脈的に投与した。無作為化期間は最大10日、追跡期間は90日で、2021年8月19日に追跡を終了。主要評価項目は、無作為化後28日までの生命維持治療(侵襲的人工呼吸、循環補助、腎代替療法)を要さない生存日数であり、副次評価項目として、28日および90日までの死亡率などが設定されていた。
転帰の解析が可能だったのは6mg群480人、12mg群491人、計971人。主要評価項目である28日目までの生命維持治療を要さない生存日数は、6mg群20.5日(四分位範囲4.0~28.0)、12mg群22.0日(同6.0~28.0)で有意差がなかった〔調整平均差1.3日(95%信頼区間0~2.6)、P=0.07〕。事前に設定されていた、所在地(欧州/インド)、年齢(70歳以上/未満)、人工呼吸管理の要否など7項目でのサブグループ解析の結果も、全て有意な交互作用は認められなかった。
さらに、副次評価項目の28日目までの死亡率も、6mg群32.3%、12mg群27.1%で有意差がなく〔調整相対リスク(aRR)0.86(同0.68~1.08)〕、また90日目までの死亡率も同順に37.7%、32.0%で有意差がなかった〔aRR0.87(同0.70~1.07)〕。
重篤な有害事象(敗血症性ショック、侵襲性真菌症など)の発現率は、6mg群13.4%、12mg群11.3%であり、やはり有意差がなかった〔aRR0.83(同0.54~1.29)〕。
著者らは、「低酸素血症を呈する重症COVID-19患者では、デキサメタゾンを倍量投与しても、臨床転帰が改善しなかった。ただしこれには、統計学的パワーが不足していた影響も考えられる」と述べている。
モナッシュ大学(オーストラリア)のSteven A. Webb氏らは、本論文に付随論評を寄せており、「28日目までの死亡率の32.3%と27.1%という差は有意でないものの臨床では重要な差と言え、高用量ステロイドが予後を改善する可能性がある」と述べている。ただし同氏も、「本研究は高用量ステロイドを標準的に用いることを支持しておらず、最適な投与量を探るさらなる臨床研究が必要」としている。
なお、本論文の数人の著者が、製薬企業との利益相反(COI)に関する情報を明らかにしている。(HealthDay News 2021年10月29日)
https://consumer.healthday.com/higher-dose-of-steroids-does-not-cut-days-without-life-support-2655338135.htmlAbstract/Full Text
https://jamanetwork.com/journals/jama/fullarticle/2785529
Editorial
https://jamanetwork.com/journals/jama/fullarticle/2785531
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