治療量ヘパリン投与で中等症COVID-19患者の死亡率低下
治療量のヘパリン投与によって中等症の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者の死亡率が低下するとの報告が、「The BMJ」に10月14日掲載された。トロント大学(カナダ)のMichelle Sholzberg氏らの研究結果。
COVID-19合併症の発症機転に凝固異常や炎症が関与することが知られている。これに対して抗凝固薬であるヘパリンは抗炎症作用を有し、内皮機能改善等の作用も併せ持つことから、COVID-19患者の予後を改善する可能性が報告されている。ただし至適投与量は決定されていない。Sholzberg氏らは、D-ダイマー上昇が認められる中等症COVID-19入院患者でのヘパリンの有用性を、予防量と治療量で比較検討した。
この研究には、米国、カナダ、ブラジル、アイルランド、サウジアラビア、アラブ首長国連邦という6カ国、28の医療機関が参加し、無作為化非盲検試験として実施された。2020年5月29日~2021年4月12日にCOVID-19で入院した3,975人にスクリーニングを実施。入院後5日以内にD-ダイマーの上昇が確認され、かつICU入室や機械的人工呼吸管理の必要性が切迫していない中等症の成人患者を対象とした。D-ダイマー上昇の判定は、各施設の基準値上限の2倍以上、または酸素飽和度が93%以下(ルームエアー)で基準値上限以上の場合とした。なお、ヘパリン投与の絶対的適応症例、出血高リスク症例、妊婦等は除外した。
適格基準を満たした465人(平均年齢60歳、男性56.8%、BMI30.3)を無作為に治療量群(228人)、予防量群(237人)に割り付け。用いたヘパリンは低分子ヘパリンまたは未分画ヘパリンで、治療量群には静脈血栓塞栓症発症後の患者への治療量を投与し、予防群にはBMIとクレアチニンクリアランスに基づく上限量を投与した。投与期間は治療量群6.5±5.4日、予防量群6.3±5.4日だった。
一次評価項目として、28日目までの死亡、ICU入室、侵襲的/非侵襲的人工呼吸管理という複合アウトカムを設定し、二次評価項目としては全死亡、静脈血栓塞栓症などを設定。安全性は大出血イベントで評価した。
28日目までの一次アウトカム発生率は、治療量群16.2%、予防量群21.9%であり群間差は有意でなかった〔オッズ比(OR)0.69(95%信頼区間0.43~1.10)〕。一方、全死亡は同順に1.8%、7.6%であり、前者が有意に低かった〔OR0.22(同0.07~0.65)〕。その他、静脈血栓塞栓症、ICU入室、および大出血イベントには有意差がなかった。
この結果を基に著者らは、「D-ダイマー上昇を伴う中等症COVID-19患者に対する治療量ヘパリン投与は、一次評価項目として設定した複合アウトカムのリスクを有意に低下させなかった。ただし、28日間の全死亡リスクの有意な低下と関連していた」と結論付けている。また、「大出血イベント発生率には有意差がなかった。換言すれば、治療量ヘパリンの投与は安全である」と述べている。
なお、数人の著者が製薬企業との利益相反(COI)に関する情報を明らかにしている。(HealthDay News 2021年11月12日)
https://consumer.healthday.com/therapeutic-heparin-reduces-mortality-for-some-with-covid-2655471050.htmlAbstract/Full Text
https://www.bmj.com/content/375/bmj.n2400
Copyright © 2021 HealthDay. All rights reserved.
Photo Credit: Adobe Stock
当コンテンツは、AJ Advisers LLCヘルスデージャパン提供の情報を元に掲載しております。
ヘルスデージャパンのコンテンツに関する利用規定はこちらをご参照ください。
免責事項
- ギリアド・サイエンシズ インクおよびその子会社(併せて「ギリアド社」といいます)が事前に書面により同意した場合を除き、当コンテンツを複写、複製、印刷することは禁止されています。
- すべての情報は「現状のまま」提供されるものであり、ギリアド社が、当コンテンツに掲載されている情報の正確さを保証するものではありません。
- 当コンテンツで得られた情報の利用により、閲覧者または閲覧者が所属する団体等において不都合、不利益または損害などが発生することとなっても、その原因が何であれ、または上記情報の利用と上記不都合、不利益もしくは損害等との因果関係が直接的であれ、ギリアド社は一切の責任を負いません。
- 当コンテンツで掲載されている情報について、ギリアド社は問い合わせ等を受け付けていません。
- 当コンテンツは、未承認薬または適応外使用に関する広告活動の禁止の趣旨を考慮の上、医学・薬学の専門家が科学・医学の進歩について知る権利の重要性に鑑みて提供するものです。ギリアド社は、当コンテンツに含まれる情報によって閲覧者の購入意欲を昂進させる意図は有していません。