WHOがCOVID-19GLを改訂し、回復期血漿を使用しないことを推奨
世界保健機関(WHO)の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)薬物治療に関するガイドラインが改訂され、回復期血漿については「使用すべきでない」との推奨が加わった。マクマスター大学(カナダ)のArnav Agarwal氏らのガイドライン作成グループによる研究の結果であり、「The BMJ」に12月7日掲載された。
WHOのCOVID-19薬物治療ガイドライン「A living WHO guideline on drugs for covid-19」は、2020年9月に初版が発行され、一定のエビテンスが得られる都度、改訂が重ねられている。6回目に当たる今回の改訂では、回復期血漿投与に関する推奨が加わった。
加えられた新たな推奨は、「非重症のCOVID-19患者に対しては、回復期血漿を使用しないことを強く推奨する」、および、「重症または重篤なCOVID-19患者に対しては、回復期血漿を使用しないことを推奨する」の2項目。なお、重症とは、酸素飽和度が90%未満(ルームエアー)の場合、または重度の呼吸困難の兆候のある場合と定義されており、重篤とは、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)や敗血症、または機械的人工換気や昇圧薬などの生命維持治療を要する状態と定義されている。これらに該当しない場合は非重症に当たる。
COVID-19パンデミック以降、罹患後の回復期にある患者の血漿に存在する、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)に対する特異的抗体を採取し、他のCOVID-19患者の治療に用いる試みが続けられてきた。ガイドラインの改訂は、それらの研究報告を対象とするメタ解析を行った結果、有用性が認められないという結論に達したため。
メタ解析の対象となった無作為化比較試験(RCT)は計16件で、参加者数の合計は1万6,236人。16件のうち8割は査読システムのあるジャーナルに論文が掲載されており、残り2割はプレプリントだった。また対象の99%は入院患者であり、15%はICU入室患者だった。妊婦や小児を含む研究はなかった。
非重症患者を対象とする4件のRCT(患者数1,602人)のメタ解析では、回復期血漿投与群の死亡のオッズ比(OR)は0.83(95%信頼区間0.43~1.46)、機械的人工換気はOR0.71(同0.18~1.77)であり、いずれも非有意だった。
また、重症度の高い患者を対象とする検討でも、死亡に関しては10件のRCT(1万4,366人)のメタ解析でOR0.92(0.70~1.12)、機械的人工換気については5件のRCT(623人)のメタ解析でOR 0.92(0.46~1.68)と、いずれも非有意だった。その他に評価されていた、症状解消までの期間や入院期間などに関しても、有用性を示すエビデンスは得られなかった。
年齢や回復期血漿の投与量、機械的人工換気の要否などで層別化したサブグループ解析では、いずれも有意な交互作用は認められず、回復期血漿投与が有用な可能性のある集団も特定されなかった。
著者らは、「評価されていたアウトカムのいずれについても有用性が認められなかったことから、回復期血漿投与のために時間やコストをかけることの正当性は見いだせない」と述べている。(HealthDay News 2021年12月7日)
https://consumer.healthday.com/convalescent-plasma-not-recommended-in-non-severe-severe-covid-2655936888.html
Abstract/Full Text
https://www.bmj.com/content/370/bmj.m3379
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