デルタ株へのワクチン有効率の低さを示すリアルワールドデータ
重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)のデルタ株に対するワクチンの有効率は、アルファ株に対する有効率よりも低下したことを示すリアルワールドデータの解析結果が、「The New England Journal of Medicine」に1月5日掲載された。英オックスフォード大学のDavid W. Eyre氏らの研究によるもの。
デルタ株出現前は、ワクチン接種により新型コロナウイルス感染症(COVID-19)罹患率が低下した。デルタ株出現後もワクチン接種によるCOVID-19重症化予防効果は示されているが、罹患率に関しては抑制効果が低下した可能性がある。これを背景にEyre氏らは、英国でのリアルワールドデータを用いてPCR検査の陽性率の変化を検討するという、後方視的観察コホート研究を実施した。
症候性COVID-19患者37万4,115人と、その濃厚接触者66万1,315人の記録が得られ、後者については26%に当たる17万3,460人が、2021年1月2日~8月2日にPCR検査を受けていた。データ欠落のあるケースを除外後、症候性COVID-19患者10万8,498人と、その濃厚接触者14万6,243人のデータを解析対象とした。なお、濃厚接触者は、同一世帯に居住している場合、または、症候性患者と1m未満の距離で1分以上、もしくは2m未満の距離で15分以上の接触が確認された場合と定義した。
2回目のワクチン接種から14日以上経過後に実施されていたPCR検査の陽性率を、ワクチン未接種者と比較した調整率比(aRR)で検討。その結果、ファイザー社製BNT162b2およびアストラゼネカ社製ChAdOx1 nCoV-19のいずれのワクチン接種者でも、aRRはアルファ株よりデルタ株において高値であり、有効率の低下が認められた。詳細は以下のとおり。
症候性COVID-19患者で検討したBNT162b2のaRRは、アルファ株に対して0.32(95%信頼区間0.21~0.48)、デルタ株に対して0.50(同0.39~0.65)であり、ChAdOx1 nCoV-19では、アルファ株に対して0.48(0.30~0.78)、デルタ株に対して0.76(0.70~0.82)。濃厚接触者での検討では、BNT162bはアルファ株に対してaRR 0.15(0.11~0.21)、デルタ株に対して0.19(0.16~0.23)であり、ChAdOx1 nCoV-19では、アルファ株に対して0.40(0.27~0.59)、デルタ株に対して0.42(0.38~0.45)。
このほか、ワクチン接種後の時間経過とともに有効率が減弱することが、症候性COVID-19患者と濃厚接触者の双方で確認された。著者らは、「デルタ株は世界中に伝播し、ワクチン接種率の高い地域でも感染拡大を再発させた。ワクチン接種後に感染した人が増加したのは、おそらくアルファ株からデルタ株への変異が最も大きな原因ではないか」と述べている。
なお、1人の著者が、ギリアド・サイエンシズ社との金銭的関係の存在を明らかにしている。(HealthDay News 2022年1月7日)
https://consumer.healthday.com/covid-vaccination-linked-to-lower-reduction-in-transmission-of-delta-2656244518.html
Abstract/Full Text
https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa2116597
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