SARS-CoV-2既感染によるオミクロン株への感染保護効果は弱い
重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)既感染であることは再感染に対して保護的に働くが、オミクロン株に関しては保護効果が弱いことを示すデータが報告された。ワイルコーネルメディシン(カタール)のHeba N. Altarawneh氏らの研究によるもので、「The New England Journal of Medicine」に2月9日、レターとして掲載された。
この研究では、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミック発生以来、カタールで行われたCOVID-19の検査、ワクチン接種、入院治療、および死亡者数といった医療データが用いられた。なお、再感染は、初回のCOVID-19罹患から少なくとも90日目以降に実施されたPCR検査で陽性と確認され、そのCt値が30以下の場合と定義された。
検討された変異株は、アルファ株、ベータ株、デルタ株、オミクロン株の4種で、研究対象者は同国の人口構成を反映し、年齢中央値31~35歳だった。初回感染から再感染が確認されたPCR検査施行までの間隔は、アルファ株に関する解析では279日(四分位範囲194~313)、ベータ株では285日(同213~314)、デルタ株では254日(同159~376)、オミクロン株では314日(同268~487)だった。
COVID-19既感染による再感染抑制効果について、まず症候性再感染全体を対象とする解析結果を見ると、アルファ株の再感染抑止に関する有効性は90.2%(95%信頼区間60.2~97.6)と計算された。続いてベータ株は85.7%(同75.8~91.7)、デルタ株は92.0%(同87.9~94.7)と、いずれも比較的高い保護効果が認められた。それに対してオミクロン株の再感染に関する有効性は56.0%(同50.6〜60.9)と、6割以下にとどまっていた。ワクチン接種の有無で層別化し検討した結果も、オミクロン株に対しては他の3種の変異株よりも、既感染による保護効果が低いことが示された。
次に、重症化リスクに対する保護効果を検討するため、再感染時に重症、重篤、および致死的となった症例に限定して検討した(重症度は世界保健機関の定義に基づき判定)。その結果、本研究対象者の中で再感染時に重症と判定された患者は、アルファ株で1人、ベータ株では2人、オミクロン株では2人であり、デルタ株では重症者が発生していなかった。また、重篤な症例や致死的症例は、いずれの変異株でも見られなかった。既感染による再感染時の重症化抑止に関する有効性は、アルファ株69.4%、ベータ株88.0%、デルタ株100%、オミクロン株87.8%と計算された。
以上より著者らは、「SARS-CoV-2の変異株のうち、アルファ株、ベータ株、デルタ株に関しては、既感染であることによる再感染に対する保護効果が強固であり、有効性は約90%だった。それに対してオミクロン株の場合、有効性は60%程度とやや低いが、一定程度の保護効果が認められた。さらに、再感染時に入院または死亡に至るような重症化リスクに対しては、いずれの変異株に対しても、既感染であることによる強力な保護効果が見られた」と結論付けている。
なお、一部の著者が、ギリアド・サイエンシズ社との金銭的関係の存在を明らかにしている。(HealthDay News 2022年2月11日)
https://consumer.healthday.com/previous-sars-cov-2-infection-offers-less-protection-against-omicron-2656617526.html
Abstract/Full Text
https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMc2200133
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