イベルメクチン早期投与に有用性を認めず
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)重症化抑止におけるイベルメクチン早期投与の有用性を検討した、プラセボ対照無作為化二重盲検比較試験の結果が「The New England Journal of Medicine」に3月30日掲載された。実薬群とプラセボ群とで、入院率や救急外来受診率に有意差は見られなかったという。ポンティフィカル・カトリック大学(ブラジル)のGilmar Reis氏らが報告した。
イベルメクチンは駆虫薬として臨床応用されている薬剤だが、COVID-19パンデミックの比較的早い段階からCOVID-19治療への転用が試みられており、特に医療コスト上の制約のある中~低所得国での期待が大きい。ただし、これまで既に60件以上の無作為化比較試験が実施され、30件以上が報告されているが、結果に一貫性が見られない。また、それらの臨床研究の大半はサンプルサイズが小さく、信頼性の懸念から取り下げられた論文もある。
これを背景にReis氏らは、ブラジル国内12カ所の医療機関での多施設共同研究を実施した。2021年3月23日~8月6日にCOVID-19のため外来受診した患者を無作為に、イベルメクチン群679人、プラセボ群679人、および、その他の介入を行う群2,157人に群分け。適格条件は、COVID-19の症状発現後7日以内に受診し、1つ以上の重症化リスク因子を有する成人であること。イベルメクチン群とプラセボ群には、400μg/kgのイベルメクチンまたはプラセボを1日1回3日間分処方した。
主要評価項目は、無作為化後28日以内のCOVID-19による入院、および、重症化による救急外来受診で構成される複合エンドポイント。後者の重症化については、救急外来受診時に6時間以上の観察を要したことで定義した。
イベルメクチン群の100人(14.7%)、プラセボ群の111人(16.3%)にエンドポイントが発生した。なお、それら211件のエンドポイントのうち171件(81.0%)は、COVID-19による入院だった。
無作為化割り付けどおりに解析するITT解析では、相対リスク(RR)0.90(95%信頼区間0.70~1.16)であり、イベルメクチン投与による有意なリスク低下は認められなかった。また、イベルメクチンまたはプラセボを少なくとも1回以上服用した患者を対象とするmodified ITT解析では、RR 0.89(同0.69~1.15)であり、やはり有意差はなかった。さらに、プロトコルが順守された患者だけを対象とするper protocol解析でも、RR0.94(同0.67~1.35)と有意差はなかった。
その他、副次的評価項目として設定されていた、全ての理由による入院、入院期間、全死亡、機械的人工換気を要した患者の割合およびその管理期間など、全評価項目について有意な群間差がなく、また有害事象発生率の群間差も有意でなかった。
著者らは、「われわれの研究報告以前に、世界保健機関(WHO)はそれまでのエビデンスに基づき、イベルメクチンのCOVID-19に対する有用性のエビデンスレベルは低いとして、臨床研究目的以外での使用を推奨していなかった。われわれの研究結果はその推奨と一致するものだ」と述べている。
なお、一部の著者が製薬企業との金銭的関係の存在を明らかにしている。(HealthDay News 2022年4月4日)
Abstract/Full Text
https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa2115869
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