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SARS-CoV-2感染から7カ月後も糞便からウイルスRNAが検出される

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は通常、呼吸器感染症として位置付けられる。しかし新たな研究から、呼吸器症状が消失後も数週間から数カ月間にわたり腸管内にウイルス感染が持続している可能性が示され、「Med」に4月12日、論文掲載された。

 論文の上席著者である米スタンフォード大学のAmi Bhatt氏は、「COVID-19患者の7人に1人で、診断から4カ月以上経過して気道からのウイルス排出も見られなくなった後、糞便中から重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)のRNAが検出された。この事実は、一部のCOVID-19患者で治癒後も長期間、腹痛や下痢、嘔気・嘔吐などの消化器症状が続くことの一因の可能性がある」と述べている。また同氏は、「いわゆるlong COVIDは、SARS-CoV-2に対する持続的な免疫反応の結果であるかもしれないが、消化管などの気道以外の部位に隠れているウイルスの持続感染の影響も否定できない」としている。

 Bhatt氏らは、2020年4月25日~7月17日にスタンフォード大学で登録されたCOVID-19に関する臨床研究の参加者のうち、軽症から中等症の経過で治癒に至った113人を10カ月間追跡し、定期的に糞便サンプルを採取した。なお、COVID-19罹患者からのウイルス排出に関する研究は重症患者を対象に行われることが多く、非重症患者での検討は本研究が初めてという。

 COVID-19診断から1週間以内に採取された糞便サンプルの49.2%(95%信頼区間38.2~60.3)から、SARS-CoV-2のRNAが検出された。4カ月時点では中咽頭からはSARS-CoV-2 RNAは検出されなかったが、糞便サンプルからは12.7%(同8.5~18.4)の割合で検出された。さらに、7カ月時点でも糞便サンプルの3.8%(同2.0~7.3)からSARS-CoV-2 RNAが検出された。

 このような糞便中のウイルスが他者へ伝播する可能性の有無についてBhatt氏は、「糞便中から検出されたのはSARS-CoV-2 RNAの断片であるため、そこから感染が拡大する蓋然性は低い」と語る。「糞便中から生きているSARS-CoV-2が分離されたという報告もあるが、患者の気道から分離されるウイルス量に比べれば、その量ははるかに少ないのではないか。われわれの研究結果が、SARS-CoV-2の糞口感染が頻発することを示唆するとは考えていない」とのことだ。

 一方で、「腸管内にSARS-CoV-2が長く存在するという事実は、このウイルスが免疫系を刺激し続け、long COVIDの病態に影響を与える潜在的な因子であることを示唆している」と同氏は語る。米国感染症財団のWilliam Schaffner氏も、「long COVIDは現在、大きな医療上の課題となっており、多くの研究がなされているにもかかわらず患者は減っていない。この病態には呼吸器とは異なる臓器系統が関与している可能性があり、今回報告された研究結果もそれを示唆している」と解説する。

 なお、Bhatt氏は今回の研究結果が、「下水中のSARS-CoV-2量から新たなCOVID-19パンデミック発生を予測する研究の方向性にも影響を与えるのではないか」とも指摘している。この指摘にはSchaffner氏も同意し、「COVID-19治癒から7カ月経過した人の約4%が糞便中にウイルスの断片を排泄しているなら、下水の分析からCOVID-19の兆候を把握しようとする研究において、考慮すべき新たな一面となり得る」と述べている。

 一方、米ジョンズ・ホプキンス大学健康安全保障センターのAmesh Adalja氏は、その懸念を否定する。「われわれは既に、下水中のウイルス量がCOVID-19の流行とともにどのように変化するのかをリアルワールドで見てきており、その意義を理解している。今回の研究で示された現象は、下水モニタリングの意義を損なうほどの影響を及ぼすとは思えない」とのことだ。(HealthDay News 2022年4月18日)


https://consumer.healthday.com/how-long-does-covid-last-2657151311.html


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Photo Credit: Adobe Stock


(参考情報)
Abstract/Full Text
https://www.cell.com/med/fulltext/S2666-6340(22)00167-2


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