Long COVIDが1年後に完全に回復しているのは3割弱
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)で入院後、1年経過した時点で完全に回復したと感じている人は3割に満たないという実態が報告された。第32回欧州臨床微生物学感染症会議(ECCMID2022、4月23~26日、ポルトガル・リスボン)で発表されるとともに、「The Lancet Respiratory Medicine」に4月23日、論文掲載された。女性や肥満者、または急性期に侵襲的換気療法を要した人では、その割合がより低いという。
この研究結果は、COVID-19により入院治療を受け生存退院した元患者を対象とする、英国での前向きコホート研究「PHOSP-COVID」のデータを解析したもの。同研究グループの筆頭者である英レスター生物医学研究センターのRachael Evans氏は、「long COVIDに対する治療法を早急に確立する必要性を浮き彫りにした結果が示された」と述べている。
研究の解析対象者は、2020年3月7日~2021年4月18日に英国内83カ所の医療機関から退院した18歳以上のCOVID-19既往者のうち、退院5カ月後の追跡調査を受けた2,320人と、1年後の追跡調査も受けた807人。後者の807人は、平均年齢58.7±12.5歳、女性35.6%で、27.8%は入院中に侵襲的換気療法が施行されていた。
追跡調査時に「完全に回復した」と回答した割合は、5カ月時点で25.5%と4人に1人に過ぎなかった。この値は1年後の追跡調査でも28.9%と、ほとんど増えていなかった。
退院1年後にも持続していた主な症状は、倦怠感(60.1%)、筋肉痛(54.6%)、動作緩慢(52.9%)、睡眠障害(52.3%)、息切れ(51.4%)、関節痛/関節腫脹(47.6%)、思考緩慢(46.7%)、疼痛(46.6%)、短期記憶障害(44.6%)、四肢脱力(41.9%)など。このほか1年後時点のメンタルヘルス関連症状として、24.9%に臨床的に意味のあるうつ症状(PHQ-9スコア10点以上)、21.5%に臨床的に意味のある不安症状(GAD-7スコア8点以上)、10.0%に心的外傷後ストレス障害(PCL-5スコア38点以上)、8.8%に重度の認知機能障害(教育歴調整後のMoCAスコア23点未満)などが認められた。
全体として各症状の有病率は5カ月後から1年後にかけて、以下に記す一部を除き、有意な変化が見られなかった。有病率が変化した症状は、四肢脱力(5カ月後47.6%対1年後41.7%、P=0.010)、知覚異常(40.6%対35.2%、P=0.014)、平衡機能障害(34.9%対30.0%、P=0.0076)の3種類。
多変量解析の結果、1年後の完全な回復の負の関連因子として、女性〔オッズ比(OR)0.68(95%信頼区間0.46~0.99)〕、肥満〔OR0.50(同0.34~0.74)〕、および入院時の侵襲的換気療法施行〔OR0.42(同0.23~0.76)〕という3因子が、独立して関連していることが明らかになった。Evans氏はこの結果について、「女性や肥満者は、COVID-19罹患後に、リハビリテーションをはじめとするより多くのサポートを必要とすることを示唆している」と述べている。
本論文の上席著者で英国立衛生研究所(NIHR)の呼吸器内科部門を統括するChristopher Brightling氏は、「急速に患者数が増加しているlong COVIDに対する医療供給体制を早急に整備しなければならない。効果的な治療法が確立されない限り、long COVIDは極めて有病率の高い疾患となる可能性がある」と指摘。また、「本研究報告は、long COVID患者の健康関連QOL回復には個別化された精密医療によるアプローチが必要であることを示す、理論的根拠と言える」と総括している。(HealthDay News 2022年4月25日)
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(参考情報)
Abstract/Full Text
https://www.thelancet.com/journals/lanres/article/PIIS2213-2600(22)00127-8/fulltext
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