COVID-19関連の死亡者数は公的発表をはるかに上回る
世界の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックに伴う死亡者数は、公的機関が発表している数値の3倍以上に当たる、1820万人に上る可能性があるとする研究結果が、「The Lancet」に3月10日掲載された。米国保健指標評価研究所のHaidong Wang氏ら、COVID-19の超過死亡の実態把握のための研究グループによる報告。
COVID-19による死亡者数に関する統計は、各国政府や世界保健機関(WHO)、EU統計局などから公表されている。ただし、パンデミックの状況を考慮すると、臨床現場からの報告の遅れや登録漏れが発生していると見込まれる。また、パンデミックにより、医療へのアクセスが制限されたことなどによるCOVID-19以外の疾患での死亡者数の増加は、それらの統計に反映されていない。
Wang氏らの研究グループは、COVID-19関連の死亡に関する利用可能なデータを可及的に収集。その解析により、COVID-19による直接的な死亡とパンデミックの影響による超過死亡(何らかの原因により通常の予測を超える死亡者数の上昇)の実態の把握を試みた。
各国政府やWHOなどの公的機関が公表している、パンデミック以前の死亡者数のデータを基に、2020~2021年の2年間に予測される死亡者数を、6通りの方法で算出。算出された数値と実際の死亡者数との差を、COVID-19による超過死亡とした。なお、パンデミック中に発生した熱波により死亡者数が増加した可能性のある週は、COVID-19の影響を過大評価する可能性があることを考慮し、統計的な処理によりその影響を除去した。
その結果、前記の2年間の公的機関の発表に基づくCOVID-19死亡者数は594万人であるのに対して、同期間の超過死亡者数はその3.07倍(95%不確定区間2.88~3.30)の1820万人(同1710~1960万)に上ると計算された。人口10万人当たりの超過死亡率は、120.3(同113.1~129.3)だった。
超過死亡者数を地域別に見ると、南アジア(527万人)や北アフリカ・中東(173万人)、東欧(139万人)などで多く、国別ではインドが407万人、米国113万人、ロシア107万人、メキシコ79万8,000人、ブラジル79万2,000人、インドネシア73万6,000人、パキスタン66万4,000人などで多いことが明らかになった。超過死亡率で比較すると、ロシアが10万人あたり374.6と最多で、メキシコが325.1、ブラジル186.9、米国179.3などが続いた。
日本は、公的統計による死亡者数が1万8,400人であるのに対して、推計された超過死亡者数はその6.02倍(95%不確定区間5.58~6.33)の11万1,000人(同10万3,000~11万6,000)に上り、世界平均の3倍強よりも乖離が大きかった。超過死亡率は10万人あたり7.3だった。なお、日本からは、パンデミック中の不安やうつの影響と考えられる自殺死亡者数の増加が報告されているが、日本以外からは自殺死亡率の上昇を示す明確なエビデンスはほとんど報告されていないという。
COVID-19による直接的な死亡以外に死亡率を押し上げたと考えられる別の要因として、米国では移動中の交通事故死のほかに、一部の州ではオピオイドの使用に伴う死亡の増加が認められた。反対に、大気汚染が緩和された影響と考えられる、呼吸器疾患による死亡の減少が観察された国もあった。
Wang氏は、「COVID-19パンデミックによる真の死亡者数を把握することは、効果的な公衆衛生上の意思決定に不可欠だ」と述べている。(HealthDay News 2022年3月11日)
https://consumer.healthday.com/excess-mortality-from-covid-19-much-greater-than-reported-deaths-2656906567.html
Abstract/Full Text
https://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140-6736(21)02796-3/fulltext
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