「禁忌を含む注意事項等情報」等はDIをご参照ください。
COVID-19で入院した免疫不全患者におけるベクルリー関連の生存転帰:オミクロン株流行期*の実臨床データからのエビデンス(海外データ)
*2021年12月から2024年2月
Mozaffari E, et al.: Clin Infect Dis. 2024;79(Suppl 4):S149-S159.
本試験はギリアド・サイエンシズ社より支援を受けています。本論文の著者の一部はギリアド・サイエンシズ社の社員です。
9. 特定の背景を有する患者に関する注意(抜粋)
9.2 腎機能障害患者
添加剤スルホブチルエーテルβ-シクロデキストリンナトリウムの尿細管への蓄積により、腎機能障害が悪化するおそれがある。非臨床試験でレムデシビルに腎尿細管への影響が認められている。[8.3、15.2、16.6.2 参照]
9.8 高齢者
患者の状態を観察しながら慎重に投与すること。一般に生理機能が低下しており、既往歴や合併症を伴っていることが多くみられる。
研究概要
目的: | 免疫不全状態*1にあるCOVID-19入院患者におけるベクルリー治療の有効性を検討する。 |
対象: | 2021年12月から2024年2月(オミクロン株流行期)にCOVID-19で入院した18歳以上の免疫不全状態にある53,795人。 |
方法: | 米国の病院請求データベースであるPINC AI Healthcareを用いたレトロスペクティブ研究。 |
主要評価項目: | 入院2日以内のベクルリー投与から14日および28日目の全死因による院内死亡率。 |
解析計画: | ベクルリー投与群とベクルリー非投与群を、年齢層、入院月、病床数などで傾向スコア(propensity score:PS)マッチングした。死亡率は、マッチングされたコホートにおいて、ベースラインから14日後および28日後の死亡/ホスピスへの退院の粗(未調整)割合として要約した。さらに、ベクルリーと14日および28日目の院内死亡率との関連は、それぞれの時点でCox比例ハザードモデルを使用して評価し、調整ハザード比(aHR)および95%信頼区間(CI)を算出した。モデルは、頑強なサンドイッチ分散推定量を用いて病院レベルのクラスター効果を補正し、年齢(連続変数)、入院月、入院時の病棟(病床使用料の記録に基づいて、ICU/高度治療室、一般病棟を区別した)の主要な共変量を補正した。入院後2日以降の副腎皮質ステロイド、バリシチニブ、トシリズマブによる治療は、時間依存性共変量として調整した。すべての分析は、ベースライン時の酸素供給なしと酸素供給ありで層別化した。また、がん(血液悪性腫瘍を含む)患者、白血病、リンパ腫、多発性骨髄腫を含む血液悪性腫瘍患者、固形臓器移植および造血幹細胞移植を受けた患者ごとにサブグループ解析を行った。 |
本試験の限界 | データベースにはワクチン接種状況や症状発現からの経過時間に関する情報が含まれていない。外来での治療履歴が不明。一部のサブグループ(例: HIV患者)のサンプルサイズが小さい。酸素供給の必要性を病院請求データで推定しているため、記録の不備が影響する可能性がある。 |
*1 免疫不全状態の患者は、がん、固形臓器移植および造血幹細胞移植(HSCT)、血液悪性腫瘍、中等度または重度の原発性免疫不全、免疫抑制薬、無脾症、骨髄不全または再生不良性貧血、HIV、および抗腫瘍薬の毒性作用を含む免疫抑制状態のICD-10-CM(InternationalClassification of Diseases, 10th Revision, Clinical Modification)1コードを使用して特定された。
1.CDC: Classification of Diseases, Functioning, and Disability. https://www.cdc.gov/nchs/icd/icd-10-cm/index.html(2025年5月22日閲覧).
サマリー:COVID-19で入院した免疫不全患者におけるベクルリー関連の生存転帰:オミクロン株流行期の実臨床データからのエビデンス(海外データ)
2021年12月から2024年2月(オミクロン株流行期)にCOVID-19で入院した免疫不全患者53,795人を対象に、ベクルリーの有効性を検討したレトロスペクティブ研究において以下の結果が得られました。
- 対象となったコホートは、65歳以上はベクルリー投与群72.1%、ベクルリー非投与群73.2%、心血管疾患を有していた患者はそれぞれ88.6%、89.9%、腎疾患は31.5%、39.5%でした(傾向スコアマッチング前)。
- 免疫不全状態のがん(血液悪性腫瘍を含む)患者は、ベクルリー投与群42.8%、ベクルリー非投与群41.9%でした(傾向スコアマッチング前)。
- 免疫不全患者において、ベクルリー投与群は非投与群と比較して14日目と28日目の院内死亡率が有意に低下しました(14日目 aHR:0.75、95%CI:0.68~0.83、28日目 aHR:0.78、95%CI:0.72~0.86、いずれもp<0.001、名目上のp値、Cox比例ハザードモデル、主要評価項目)。
- がん(血液悪性腫瘍を含む)患者において、ベクルリー投与群は非投与群と比較して14日目と28日目の院内死亡率が有意に低下しました(14日目 aHR:0.73、95%CI:0.66~0.80、28日目 aHR:0.74、95%CI:0.68~0.81、いずれもp<0.001、名目上のp値、Cox比例ハザードモデル、主要評価項目のサブグループ解析)。
aHR:調整ハザード比、CI:信頼区間
本論文では安全性評価がされていないため、ベクルリーの安全性情報については電子添文をご参照ください。
研究デザイン
- 米国の病院請求データベースであるPINC AI Healthcareを用いたレトロスペクティブ研究。
- 組み入れならびに除外基準を適用した28,966人のデータのうち、入院から2日以内にベクルリーが投与された場合にベクルリー投与群、それ以外をベクルリー非投与群に分類した。
- 1:1のPSマッチングにより両群を8,822人ずつのペアにした。
PS:傾向スコア
主な組み入れ基準
18歳以上の免疫不全状態にあるCOVID-19入院患者
主な除外基準
妊婦、データの不備、他の病院またはホスピスからの転院、ベースライン期間中(入院開始2日間)の退院または死亡、入院開始2日目以降にベクルリー投与を開始
Mozaffari E, et al.: Clin Infect Dis. 2024;79(Suppl 4):S149-S159.
https://creativecommons.org/licenses/by/4.0/より改変
本試験はギリアド・サイエンシズ社より支援を受けています。本論文の著者の一部はギリアド・サイエンシズ社の社員です。
患者背景
- 傾向スコアマッチング前において65歳以上は、ベクルリー投与群で72.1%、ベクルリー非投与群73.2%でした。
- 主な基礎疾患を有していた患者の割合は、傾向スコアマッチング前において心血管疾患がベクルリー投与群88.6%、ベクルリー非投与群89.9%、腎疾患がそれぞれ31.5%、39.5%でした。
- 免疫不全状態のがん(血液悪性腫瘍を含む)患者は、傾向スコアマッチング前においてベクルリー投与群42.8%、ベクルリー非投与群41.9%でした。
PS:傾向スコア
Mozaffari E, et al.: Clin Infect Dis. 2024;79(Suppl 4):S149-S159.https://creativecommons.org/licenses/by/4.0/より改変
本試験はギリアド・サイエンシズ社より支援を受けています。本論文の著者の一部はギリアド・サイエンシズ社の社員です。
COVID-19で入院した免疫不全患者の入院2日以内のベクルリー投与から14日および28日目の全死因による院内死亡率(主要評価項目)
- 免疫不全患者において、ベクルリー投与群は非投与群と比較して14日目と28日目の院内死亡率が有意に低下しました(14日目 aHR:0.75、95%CI:0.68~0.83、28日目 aHR:0.78、95%CI:0.72~0.86、いずれもp<0.001、名目上のp値、Cox比例ハザードモデル)。
共変量:年齢、入院月、入院時の病棟、ベースライン後のCOVID-19治療(副腎皮質ステロイド、バリシチニブ、トシリズマブ)
aHR:調整ハザード比、CI:信頼区間
Mozaffari E, et al.: Clin Infect Dis. 2024;79(Suppl 4):S149-S159. https://creativecommons.org/licenses/by/4.0/
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COVID-19で入院した免疫不全患者の入院2日以内のベクルリー投与から14日および28日目の全死因による院内死亡率(主要評価項目のサブグループ解析)
- 14日目と28日目の死亡率を、がん(血液悪性腫瘍を含む)患者、血液悪性腫瘍(白血病、リンパ腫、多発性骨髄腫を含む)患者、固形臓器移植および造血幹細胞移植を受けた患者、白血病患者、リンパ腫患者、多発性骨髄腫患者でサブグループ解析しました。
- がん(血液悪性腫瘍を含む)患者において、ベクルリー投与群は非投与群と比較して14日目と28日目の院内死亡率が有意に低下しました(14日目 aHR:0.73、95%CI:0.66~0.80、28日目 aHR:0.74、95%CI:0.68~0.81、いずれもp<0.001、名目上のp値、Cox比例ハザードモデル)。
共変量:年齢、入院月、入院時の病棟、ベースライン後のCOVID-19治療(副腎皮質ステロイド、バリシチニブ、トシリズマブ)
aHR:調整ハザード比、CI:信頼区間
Mozaffari E, et al.: Clin Infect Dis. 2024;79(Suppl 4):S149-S159. https://creativecommons.org/licenses/by/4.0/
本試験はギリアド・サイエンシズ社より支援を受けています。本論文の著者の一部はギリアド・サイエンシズ社の社員です。