「禁忌を含む注意事項等情報」等はDIをご参照ください。
重度腎機能障害を有するCOVID-19患者におけるベクルリー投与の安全性評価:日本人データを含むシステマティックレビューおよびメタアナリシス
Umemura T, et al.: BMC Infect Dis. 2025;25(1):782.
本論文の著者の一部はギリアド・サイエンシズ社より講演料を受け取っています。
ベクルリー点滴静注用100mg 電子添文 2024年12月改訂(第11版)
8. 重要な基本的注意(抜粋)
8.1 肝機能障害があらわれることがあるので、投与前及び投与開始後は定期的に肝機能検査を行い、患者の状態を十分に観察すること。[11.1.1 参照]
9. 特定の背景を有する患者に関する注意(抜粋)
9.2 腎機能障害患者
添加剤スルホブチルエーテルβ-シクロデキストリンナトリウムの尿細管への蓄積により、腎機能障害が悪化するおそれがある。非臨床試験でレムデシビルに腎尿細管への影響が認められている。[8.3、15.2、16.6.2 参照]
11.1 重大な副作用(抜粋)
11.1.1 肝機能障害
ALT上昇に加えて、肝機能障害の徴候又は検査値異常(抱合型ビリルビン、ALP又はINRの異常)が認められた場合には、投与を中止すること。[8.1 参照]
研究概要(日本人データ及び海外データ)
目的: | COVID-19患者における重度腎機能障害(SRI: severe renal impairment)を有する患者に対するベクルリーの安全性を、SRIを有さない患者やベクルリーを使用しない患者と比較して検討する。 |
対象・方法: | システマティックレビューおよびメタアナリシスの報告基準であるPRISMAガイドライン(Preferred Reporting Items for Systematic Reviews and Meta-Analyses)に従って実施した。2024年10月11日までにPubMed、Cochrane、CINAHLおよび医中誌データベースを対象に、英語および日本語で書かれた関連論文を検索した。検索語句は「remdesivir」「chronic kidney disease」「renal failure」「covid 19」など。合計294件の文献をピックアップし、重複や無関係な研究を除外した43件の研究が潜在的に適格であると判断した。43件の全文を精査し、最終的に1件のランダム化比較試験(RCT)および14件のコホート研究が選定基準を満たし*1、最終的なメタアナリシスに含んだ*2。 |
主要評価項目: | 腎障害(血清クレアチニン値の上昇など)、肝障害(ASTまたはALTが正常上限値の5倍以上)。 |
解析計画: | Review Managerを使用してメタアナリシスを実施した。研究間の統計的不均一性はχ²検定で評価した。不均一性の程度はI²で示した(0~25%: 低不均一性、25~50%: 中程度不均一性、50~75%: 実質的な不均一性、75~100%: 顕著な不均一性)。有意な不均一性はp<0.1またはi²>50%と定義した。データが均一とみなされた場合は固定効果モデルを、異質性が認められた場合はランダム効果モデルを適用した。不均一性が観察された場合は感度分析を実施した。その後、バイアスリスクが低い研究に限定した感度分析を行った。少なくとも10件の研究がこのカテゴリーに分類された場合、Egger検定を使用して出版バイアスを評価した。各研究について未調整のリスク比(RR)、オッズ比(OR)、95%信頼区間(CI)を算出した。プールされたRRまたはORおよび95% CIはランダム効果モデル(DerSimonian and Laird法)を使用して算出し、これらの結果からRRまたはORを比較した。 0.1またはi²> |
- *1:国内データによる論文3件を含む。
- *2:本研究では、ベクルリーの投与レジメンが不明な研究を一部含みますが、弊社では電子添文に則った適正使用を推進しております。
日本人データを含む本研究のまとめ
294件の文献のうち適格性が評価された15件の文献をもとに、COVID-19患者における重度腎機能障害(SRI)を有する患者に対するベクルリーの安全性を検討するシステマティックレビューとメタアナリシスをし、下記の結果が得られました。
- ベクルリーを投与されたSRI患者群はベクルリー非投与のSRI患者群と比較して、腎障害発生のリスクが有意に低下しました(リスク比 0.51、95%CI 0.27~0.97、p=0.04、名目上のp値、ランダム効果モデル) 。
- ベクルリーを投与された非SRI患者群はベクルリーを投与されたSRI患者群と比較して、腎障害発生のリスクが有意に低かった(オッズ比 2.51、95%CI 1.49~4.23、p=0.0005、名目上のp値、ランダム効果モデル) 。
- ベクルリーを投与されたSRI患者群とベクルリー非投与のSRI患者群を比較して、肝障害発生のリスクに有意な差はありませんでした(オッズ比 0.88、95%CI 0.39~1.98、p=0.76、名目上のp値、ランダム効果モデル) 。
- ベクルリーを投与されたSRI患者群とベクルリーを投与された非SRI患者群を比較して、肝障害発生のリスクに有意な差はありませんでした(オッズ比 1.04、95%CI 0.43~2.53、p=0.92、名目上のp値、ランダム効果モデル) 。
本研究の限界
・多くの研究が後ろ向き観察研究であり、ランダム化比較試験が1件のみであるため、エビデンスの質に限界があります。
・各研究における患者背景(病状の重症度、変異株、ワクチン接種状況、抗体治療の有無)の定義が統一されていませんでした。
・分析対象外の副作用(例:血小板減少症、徐脈など)が多岐にわたり、包括的な評価が困難でした。
本論文では安全性評価がされていないため、ベクルリーの安全性情報については電子添文をご参照ください。
ベクルリーを投与されたSRI患者とベクルリー非投与のSRI患者の腎障害発生リスクの比較(主要評価項目❶、日本人データ及び海外データ)
- ベクルリーを投与されたSRI患者群はベクルリー非投与のSRI患者群と比較して、腎障害発生のリスクが有意に低下しました(リスク比 0.51、95%CI 0.27~0.97、p=0.04、名目上のp値、ランダム効果モデル) 。
Bartoletti M, et al.: Clin Infect Dis. 2025:ciaf111. doi: 10.1093/cid/ciaf111. Epub ahead of print.
https://creativecommons.org/licenses/by/4.0/
本試験はギリアド・サイエンシズ社より支援を受けています。本論文の著者の一部はギリアド・サイエンシズ社の社員です。
ベクルリーを投与されたSRI患者と非SRI患者の腎障害発生リスクの比較(主要評価項目❷、日本人データ及び海外データ)
- ベクルリーを投与された非SRI患者群はベクルリーを投与されたSRI患者群と比較して、腎障害発生のリスクが有意に低かった(オッズ比 2.51、95%CI 1.49~4.23、p=0.0005、名目上のp値、ランダム効果モデル) 。
Bartoletti M, et al.: Clin Infect Dis. 2025:ciaf111. doi: 10.1093/cid/ciaf111. Epub ahead of print.
https://creativecommons.org/licenses/by/4.0/
本試験はギリアド・サイエンシズ社より支援を受けています。本論文の著者の一部はギリアド・サイエンシズ社の社員です。
ベクルリーを投与されたSRI患者とベクルリー非投与のSRI患者の肝障害発生リスクの比較(主要評価項目❸、日本人データ及び海外データ)
- ベクルリーを投与されたSRI患者群とベクルリー非投与のSRI患者群を比較して、肝障害発生のリスクに有意な差はありませんでした(オッズ比 0.88、95%CI 0.39~1.98、p=0.76、名目上のp値、ランダム効果モデル) 。
Bartoletti M, et al.: Clin Infect Dis. 2025:ciaf111. doi: 10.1093/cid/ciaf111. Epub ahead of print.
https://creativecommons.org/licenses/by/4.0/
本試験はギリアド・サイエンシズ社より支援を受けています。本論文の著者の一部はギリアド・サイエンシズ社の社員です。
ベクルリーを投与されたSRI患者と非SRI患者の肝障害発生リスクの比較(主要評価項目❹、日本人データ及び海外データ)
- ベクルリーを投与されたSRI患者群とベクルリーを投与された非SRI患者群を比較して、肝障害発生のリスクに有意な差はありませんでした(オッズ比 1.04、95%CI 0.43~2.53、p=0.92、名目上のp値、ランダム効果モデル) 。
Bartoletti M, et al.: Clin Infect Dis. 2025:ciaf111. doi: 10.1093/cid/ciaf111. Epub ahead of print.
https://creativecommons.org/licenses/by/4.0/
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